削除と置き換え

不老になるためのキーワードは現時点で老化細胞の除去とその置き換えであろう。前にも述べたとおり、老化細胞は周囲の細胞に影響を与え、周囲の組織に老化およびがん化をもたらす。体にとって有害な作用も強く、その削除によって老年マウスが長生きするようになることも報告されている。しかし、それは長生きという範囲に留まっている。不老ではない。では不老の獲得には何が必要なのであろう。それは細胞の「置き換え」なのではないかと私は考えている。老化細胞の削除のみでは体の細胞数が減少し、既に体内に存在している分裂回数の決まっている幹細胞のみではその「置き換え」に限界が生じる。そこで、外から本人のiPS細胞などの細胞を導入することで、その「置き換え」を可能にするのではないかと考えている。既に知られているMuse細胞や間葉系幹細胞 (MSC) などが候補になっているが、この置き換えに関する再生医療的研究はあまり進んでいないように思える。今後「置き換え」が律速段階になる可能性があるため、新たに注目する必要がある。